NEC LaVie LL870/C(LL870CS)、電源が全く入りません。
Windows7機、サブ機として、主にテレビ視聴で活躍していたそうです。
メーカーに修理を依頼するも、部材の保有期限が過ぎているので、修理不可の宣告。2014年の記事になりますが、NEC PC-LL870CS、LL750CS、LL750BS、LL750AS、画面映らず起動しない をご覧頂き、症状が似ているということでご依頼頂きました。
前兆として、過去にも電源が入らないことがあり、ACアダプターの抜き差しや時間を置くと起動するといったことがあったそうです。過去記事は「画面が映らない」という症状であり、チップコンデンサのショートであれば、気まぐれな動作はせず、ダメになったらパンク部品を交換するまで正常に起動しないはずなので、故障原因は多分違ったものだと思う、とお伝えしました。
お問い合わせ時に真っ先に疑ったのが、ACアダプターの故障。過去にも電源が入らない原因がACアダプターだったことが数回あり、事前検査出来るものであれば、お客様の方で確認して頂くようにしています。
結果、テスターで電圧を計ると、正常値の19Vが出たとのことで、実機を送って頂くこととなりました。テスターが無かったり、同型のアダプターが無い場合には、お知り合いの電気関係のお仕事をしている方や、町の電気屋さんでサクッっと調べてもらうと良いかと思います。
さて、実機到着。ACアダプターを差しても、充電ランプも付きません。しかし…プラグを差している間、顔を近づけてみると、”ジー、カチカチ”というような、かすかな動作音が聞こえました。つ、通電している…。ただ、この音、何と表現すれば良いか、マザーボードが困っているというか、深刻な状態というか、嫌な予感がします。
過去記事同様になりますので、検査手順や画像は省きます。
マザーボードを取り出しました。コンデンサやヒューズなどのチップ部品からは、故障反応が出ていません。ACアダプターを差し、前述の音がどこからしているのか、耳を近づけてもハッキリとしません。
こういった状態の中、ACアダプターを繋いで検査をしていると(電源は入っていない状態)、特定の箇所、MOS-FETやタンタルコンデンサなどの部品が異常に熱くなっていることがあります。うっかり触れたり、掴んでしまって、「アツッッ!」となるわけです。それで故障部品が判明すればラッキー、基板の何もない部分が熱くなっていて、手が出せない場合もありますが…。
熱いのは嫌なので、赤外線のサーモメーターを使用し、大量に付いている半導体パーツの温度を調べてみましょう。この時期の基板の常温は23℃前後、異常発熱していれば50℃以上になっている箇所があるかもしれません。
わずかに温度が高いパーツがありました。ここだけが、他より5℃ほど高い。温度を計測しながらカメラのシャッターを切れないので、後から撮影しました。DCジャックからのコネクタも抜いていますが、その付近ですね。
このMOS-FET、表面をよーく見ると、何か線が入っているようにも見えます。ただ、私の肉眼では線らしきもの確実性はおろか、印刷文字も読めません。小さい部品なので許して下さい。
たまたま同日、非常に細かい半田作業をしていたので、実体顕微鏡を引っ張り出してありました。早速覗いてみましょう。何か見えるかな。
おーっ、完全に亀裂が入っているじゃないですか。元凶はこいつですね。
同等MOSFETの手持ちがありましたので、早速交換します。まずは不良MOSFETと半田をきれいに除去し、
交換、半田付け。取り外した部品(左側)、亀裂などほとんどわからないレベルだとわかってもらえるでしょうか。
さて、仮組みで簡易動作確認です。基板にバッテリーのみ装着しています。
点きましたね、充電ランプ。良かった。
組み上げ後、ストレステスト、長時間放置&インターバルで不具合が出なければ返却とします。
問題は無いようです。未起動時の嫌な音も消えています。地デジ付きの高級機、復活しなければ、重しかオブジェになるところでした。Windows10にすると、地デジ機能は失われると思われますが、出来るだけ長生きしてくれればと思います。ありがとうございました。