おなじみ、富士通のFMV-BIBLO NF/E40とNF/G40の画面が全く映らない症状。すべてAMDのチップセットの半田不良です。
この機種はそれぞれかなりの台数を修理しています。今回は、別の業者さんで過去に修理されたもの、その他、気になったことを少し書いてみたいと思います。
いつもの画です。チップセットリフロー後の仮組み表示確認。表示自体は簡単に復帰します。
この中の1台、NF/G40はこんな感じでした。
電源を入れると電源ランプはつくのですが、画面は真っ暗なまま立ち上がりません。この不具合は3回目(1回目:2011年10月、2回目:2012年1月)で、過去2回とも修理会社さんにお願いしています。
初回はマザーボードとHDDに不具合があるとのことで、マザーボード補修とHDDの交換リカバリ作業を行ったとあります。これに○万円かかりました。2回目はマザーボードチップ補修をしたとのことで、これは保証期間中でしたので費用はかかっておりません。ネットで検索し貴社の修理日記に辿り着きました。再発防止も兼ねた修理を希望します。
なるほど。10月・1月・6月というペースで不具合の発症・再発をしているわけですね。やはり、この機種の場合は単なる加熱処理では、長持ちはしないということがわかります。
私は初めて知った名前ですが、その業者さんは聞くまでもなくわかりました(笑)
ステッカーが思いっきり主張しています(戻ってきたら、勝手に貼られていたとのこと)。ノートパソコン修理専門、検索してみると、かなり大きくやっているようです。画像は一応ぼかしておきます。
さて、どんな状態か見てみましょう。こちらはノーマルのチップです。四隅の黒い物体は、コーナーボンド・アンダーフィルというカチカチのボンド。本来、チップの半田が浮いたりしないよう、基板にガッチリ固定するために付けられています。メーカーにより成分は様々で、薬品で軟化するもの、高熱を当てて削るものなどがあります。
この黒いヤツは取り外しに苦労する部類。しかも、ボンド下にはチップ部品が埋まっており、基板のバターンも多数走っております。
こちらは依頼品。ボンドが外されていますが、再実装はされていません(チップ裏に残ったボンド、半田ボールはPbフリーという事から判断)。チップの加熱処理のみと思われます。
しっかし、グリスの盛りすぎで清掃が大変…後に当方の加熱で画面表示は確認できました。
外したチップのパッド面と基板の画像です。ボンドを剥離する際にかなりほじったのだとわかります。チップの端ラインは削れてしまっています。角はチップの内部が若干露出。
マザーボード側にも破損。幸い影響は無いものの基板のレジストの一部が削り取られています。勢い余って削ってしまったのでしょう(ボンドを外した経験のある方にはわかると思います)。
この状態でも、リボール・再実装は可能ですが、破損したチップで修理保証を付ける気にはなれません。独断でチップセット載せ替えとしました。
もう一点。あら探しのようで申し訳ないのですが、余りにも初歩的なミスなので。
DVDトレイを外したところのネジ2本がありませんでした。この2本がどこにあったかというと、HDDマウンタを止める部分3箇所のうちの2箇所に刺さっていました(ネジ径が違うんですが…)。HDDマウンタは本来3本のネジで止まっています。中央1本は付いていませんでした。結果、マウンタの3本は不足しているという事になります。
このミス、よくわかるんですよね。本来は、先にネジを締めてから、DVDドライブを挿し込まなくてはなりません。しかし、分解時と違い、組み立て時は勢いがつきます(笑)はまる部品は、はめたくなってしまうのです。ドライブを挿したあとで、ネジが2本余る。あれ?どこのだったっけ?ま、いいか。てな感じだったのではないでしょうか。
HDDの3本は恐らく紛失。組み立ての最終段階で締めるネジ。無い理由がわかりませんので。
いろいろありましたが、チップセット載せ替えを終え、無事に起動が確認できました。良かったです。
もう一点、前から気になっていたこと。
CPUとチップセットで共有している冷却用のヒートシンク。組み上げ時にそれぞれのICダイに薄くシルバーグリスを塗ります。ヒートシンクを装着した後、わざわざ外して密着具合を確認します。
この時にCPU側が一部しか密着しないという事が多々あります。これではCPUが熱暴走してしまいます。
よーく見ると、CPUダイが当たる部分、グレーのテープが陥没しています。テープが段差になり、密着を妨げているのです。
このようにテープをカットしてから、装着しなければ、本来の冷却は得られません。
こんなのが、4、5台に1台はあるでしょうか…。個体によってテープの位置が違うので、もちろん手作業で貼っているのでしょうね。結構適当でも、隙間はシリコングリスで埋めちゃうから大丈夫、的な。
しかし、CPU側に隙間が出来るということは、チップセット側の隙間も広がっている、という事になります(共用なので)。これもチップセットの半田不良を招く原因のひとつになっているのでは、と個人的には考えています。
しかししかし、CPUの熱がヒートシンクに逃げすぎても、チップセットがその爆熱を拾ってしまいます。このAMDのCPUが壊れていたことは滅多に無いので、この辺が難しいところですね。
何はともあれ、リスクの高い修理が全てうまくいきました。昨年から依頼が増え始め、現在までリボール・再実装修理の成功率は100%、再発は0です(でも、いつかは来るとドキドキしている)。
★2016年3月を以て、グラフィックチップの修理は、受付を終了しました。データ救出は対応可能です。