GATEWAYのノートPC、MT6827j。電源は入るが画面に反応がない状態です。
グラフィックチップ(GPU)のリボール・再実装修理の「成功率は100%ではない」「失敗や修理不能な場合もある」「リスクが高い」と言うことをお伝えするために、3連で記事を書いてみたいと思います。
まずは裏蓋を開けてチップ類を確認。ゲートウェイにはよくある構造で、ファン+ヒートシンクを外すと、CPU・チップセット・GPUなどを簡単に露出することができます。
グラフィックはATI。放熱シートがきちんと当たっていません。ダイ部分が見えてますね。
そこいら中にフラックスが流れ出た形跡や加熱痕。これはかなりやられている雰囲気です。
保護シートは粘着力を失っていて、すぐに剥がれてしまいました。
バラさずにATIのチップを仮加熱。加熱は局所的に赤外線で15秒程度です。
これでも一時的に復活します。わずか十数秒のリフローですから、半田が溶けているわけではありません。急激な加熱で半田ボールが膨張、接点が復活し、起動しているだけです。恐らく数日で元に戻るでしょう。
この後、再実装ならマザーボードを取り出して実装工場へ。リフロー修理なら、同様にマザーボードを取り出して、本加熱(半田が溶けるまで)を。今回は再実装のご依頼です。
さて、外したマザーボード…あきらかに反っている…。一枚板を横から見ると「へ」の字になっているとイメージして下さい。チップセット2つに加熱された跡があることから、ヒートガンなどでかなり強力に、また反り防止をせずに炙ったのでしょう。
本機種は中古で入手とのこと。本来の私の修理規定では、GPUチップにダメージを受けていると判断した場合は、修理をお断りするか、保証期間を短くしています。
今回は仮起動が確認できていることから、再実装修理に踏み切りました。
基板回収後。起動しませんでした。電源ランプが一瞬点いて消える状態。
2度目の再実装へ。反りの修復もがんばって貰いましたが実らず。電源が入りません。
元々加熱履歴があると思われるGPUを、高熱で取り外し、高熱で実装。恐らく熱に耐えられず、IC自体が破損、内部ショートしていると考えられます。ICの載せ替えで動く可能性はあるが…この基板の反りでは止めた方が無難です。※一般的にこのようなICには加熱回数の限度があると言われています。回数は当然非公表だと思います。
再リフロー修理であれば、ある程度もったかもしれません。しかし再発は避けられないと考えます。
結局、2回の再実装で修理断念。電源は入らず、単なる充電器となってしまいました。
グラフィックの修理をする場合、施工前にしつこいほどリスクを説明しています。「悪化する」「電源が入らなくなる」「再発がある」「直ればラッキー」、全て成功報酬です。絶対に失敗してくれるな、という方は、メーカーへ修理依頼をお願いします。リスクにご同意頂けた方のPCのみ、全力で修理させて頂きます。
★2016年3月を以て、グラフィックチップの修理は、受付を終了しました。データ救出は対応可能です。