DELLのハイスペックなノートPC、XPS M1530です。症状は電源は入るが画面が真っ黒。
ご依頼はGPUのチップ再実装修理です。そしてバッテリーが死んでいるためBIOSのアップデートが出来ない…
お客様は憤慨されてらっしゃいました。
GPUの耐久性に問題がある不具合の問題発覚後、DELLからFAN周りの設定を見直したとされるBIOSが公開されていた。バッテリーが無くて(死んでいて)BIOSがUPDATE出来ないがどうしたらいいか?と、DELLに問い合わせるも返答無し。この時、標準バッテリーはすでに在庫が無く購入出来なかった。そのままにしていたら今回の不具合が起きてしまった。
互換バッテリーなら入手できそうですが、それでBIOSが確実にアップデートできるか?と問われても、Yesと断言は出来ません。まぁ、パソコンが直ったらなんとかしましょう。
この機種、分解が大変です。ワイヤレスLANのケーブルが何本も這い回り、基板はDCジャック、CMOS電池、PCカードなどが別基板になっています。
当方ではリボール修理をする前に、必ず仮リフローで画面の表示を確認しています。GPUの故障を断定しているわけです。
今回は仮組みでの動作確認が大変そうです…。裏蓋を開けるとGPUにアクセスできます。ちょっと失礼して、マザーボードを外さずに軽く赤外線で加熱してみることにします。
起ちあがりました。nVIDIAのGPUが原因です。
それでは、改めて分解に入ります。
マザーボードを取り外し実装工場へ。
さて、待つ間、DELLのバッテリーが無いかジャンク箱を漁ってみます。
ひとつだけありましたが、形が全く違いますね…。
数日後。戻ってきたマザーボードで仮組み。液晶表示を確認しました。
そして…BIOSのアップデートです。当方のバッテリーはかろうじて生きているようでした。ですが、前述の通り形状が全く違うのではまりません。
でも良く見ると端子の形状は一緒。裸のマザーボードに異形のバッテリー、USBキーボード、USBマウス、LCDを挿し、強引にBIOSのバージョンアップをしてしまいましょう。
バッテリーが充電100%になるまでひたすら待つ…。発熱がかなりすごいので、基板上にアイスノン。アップデート中に熱暴走でシャットダウンしてしまったら再起不能になってしまいます。
基板は冷え冷え、私はヒヤヒヤという状態でアップデートを見守ります。
ふぅぅ、無事に終了しました。A12、最新版が適用されています。
本組みして起動を確認。なかなかの解像度です。この後、ストレステストを繰り返し、ご返却となりました。
★2016年3月を以て、グラフィックチップの修理は、受付を終了しました。データ救出は対応可能です。
お客様より
他の業者、ましてはメーカ修理では到底不可能な対応、及び、迅速な対応に大変感謝しております
喜んでいただけて幸いです。BIOSのアップデートは通常でも緊張が走りますが、今回は折角直した基板をオシャカにする可能性もありました。性格なのでしょうが「何とかしてあげたい」という気持ちが抑えきれない…。そのうち何かとんでもない不祥事を起こしそうで怖いです。でもそれがうちの持ち味かもしれません。